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奈良監獄物語

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奈良の町を見下ろす丘に
美しい刑務所がありました。
明治時代につくられた
その赤煉瓦の建物は
罪をつぐなう人を見守り
戦後は少年刑務所として
傷ついた子どもたちの心を
抱き、癒し、育みました。
人生を再出発するための希望の場所として設計された
旧奈良監獄百九年の歴史を描く
後世に語り継ぎたい物語です。

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若かった明治日本が夢見たもの

奈良監獄は司法省の建築技官だった山下啓次郎(ジャズピアニストの山下洋輔氏の祖父)が設計しました。

明治政府は不平等条約の撤回を目指していましたが、諸外国は「司法制度の確立」「まともな牢獄」「受刑者の人権」を求め条約撤回に応じませんでした。
そこで政府は、受刑者に配慮した立派な刑務所を作るべく、山下を海外視察に向かわせ帰国後、全国五カ所にレンガ造りの監獄を設計しました。
こうした設立の理由や社会背景、明治から昭和にかけての人権問題、戦後から少年刑務所として使われてからの更生教育や職業訓練にも力を入れるようになったのです。
刑務所のレンガの美しい壁は、少年たちを社会から隔離するためのものでなく、差別や虐待で傷ついた心の傷を癒すための防波堤であり、社会復帰を目指す受刑者の学校や職業訓練の場所だったということがよくわかります。
そんな建築物を明治時代に設計・建設していたことに驚きます。『奈良監獄物語』は、そうした歴史的変遷や役割を一人称で語る大人も楽しめるノンフィクション絵本です。


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奈良監獄物語【若かった明治日本が夢みたもの】文 寮美千子 絵 磯良一 デザイン ハイ制作室 渡辺優史 編集 飯田邦幸 樋口健一 発売 小学館 発行 小学館クリエイティブ




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by goat-hill | 2019-06-28 22:45 | 絵本